【インタビューあり】プロ野球選手が求める『良いトレーナー』になるための条件
皆さんは、選手がどんなトレーナーを『良いトレーナー』だと思っているか?を考えたことがあるでしょうか。
今回は、現役・元NPB選手や元マイナーリーガーなどプロ野球選手5名を対象に、「どんなトレーナーが『良いトレーナー』だと思うか?」をインタビューしました。
選手が思う『良いトレーナー』の条件がわかれば、選手が求めるトレーナーに近づくことができるかも知れません。
この記事を読むことのメリット
- どんなトレーナーが『良いトレーナー』だと思われるのかがわかる
- 選手から必要とされるトレーナー像がわかる
- プロ野球選手をサポートする際に意識すべきことがわかる
結論から申し上げますと、『良いトレーナー』の条件は以下の通りです。
“『良いトレーナー』の3つの条件”
条件①:専門分野の知識・スキルが優れている
条件②:説明能力がある
条件③:選手の意見を尊重できる
目次
- ○ 1.【調査】プロ野球選手が求める『良いトレーナー』になるための条件
- ○ 2.【結果】Q.どんなトレーナーが『良いトレーナー』だと思いますか?
- ・選手①〈NPB→AAA〉の回答
- ・選手②〈NPB〉の回答
- ・選手③〈独立リーグ〉の回答
- ・選手④〈独立リーグ〉の回答
- ・選手⑤〈独立リーグ〉の回答
- ○ 3.【考察】選手が求める『良いトレーナー』の3つの条件
- ・条件①:専門分野の知識・スキルが優れている
- ・条件②:説明能力がある
- ・条件③:選手の意見を尊重できる
- ○ 4.まとめ
- ・たまには選手から評価されることも大切
1.【調査】プロ野球選手が求める『良いトレーナー』になるための条件
今回、プロ野球選手5名(現役3名、OB2名)から、”どんなトレーナーを『良いトレーナー』だと思いますか?”という質問に回答してもらいました。
プロ野球選手であれば、キャリアの中で多くのトレーナーと関わっているはずですので、その意見は一見の価値があると思います。
なお「トレーナー」には様々な役職が存在します。
本記事内では、
・治療系(例:アスレティックトレーナー、理学療法士など)
・トレーニング系(例:S&Cコーチ、パフォーマンススペシャリストなど)
の2つに分けて話を進めていきます。
※トレーナーの役職の違いについては、"S&Cコーチ池田克也さん"が書かれた記事が大変参考になります。
【参考】スポーツトレーナーという名称への違和感とスポーツ医科学専門職の職域
2.【結果】Q.どんなトレーナーが『良いトレーナー』だと思いますか?
以下、プロ野球選手5名にいただいた実際の回答になります。
※選手の考えが一番伝わるよう、回答をそのままの形で掲載しています。
選手①〈NPB→AAA〉の回答
【治療系】
1:選手の立場や状況、パフォーマンスを良く理解した上で対応してくれる。
2:怪我の治療だけではなく、「なぜ怪我してしまったのか?」の原因を特定してくれる。
【トレーニング系】
1:シーズンやその先を見据えた上でトレーニングの強弱を考えてくれる。
2:シーズン中にアクセルを踏まなければいけない時、ブレーキを踏む時があるはずで、そのメンタルの浮き沈みに流されず選手としっかり話し合って助言してくれる。
3:パフォーマンスを見た上で選手に何が足りないのか話し合える。
4:若い選手にはプロで活躍するために、すべきトレーニング、栄養学、生活リズムを指導してくれる。
※補足:選手、ストレングスコーチのお互いがリスペクトできる人間関係が前提。
選手②〈NPB〉の回答
【治療系】
1:選手ファースト(選手の意見を尊重した上でどうしていくか話しを進めててくれる方)
2:体の痛めた箇所を気にかけてくれる。
3:治療が上手。
【トレーニング系】
1:選手ファースト(同上)
選手③〈独立リーグ〉の回答
【治療系/トレーニング系】
1:結果を出せる。(野球の能力を上げられる人、身体だけ強くする人ではない)
2:理論に基づいた説明ができる・(理由を説明できる、野球に理解がある人でないとNG)
3:考えを押し付けず対話できる。(我を通してくる人はNG)
選手④〈独立リーグ〉の回答
【治療系/トレーニング系】
1:選手1人1人に合ったトレーニング、ケア等々が組める。(それを行うための、膨大で深い知識、頭の柔軟性がある)
2:周りに振り回されない自分だけの技がある。(流行りや根拠のない事小手先だけのものではなく、原理原則+自分の経験に基づく何度も試して結果が出た絶対的なもの)
選手⑤〈独立リーグ〉の回答
【治療系/トレーニング系】
1:アドバイスを求めた際に、複数提示してもらえる。
2:与えたメニューを実演できる。
3:説得力のある身体。
4:何でも相談しやすい関係を築ける(歩み寄ってくれる)。
5:練習の手伝いをしてくれたり、一緒に動いてくれる。
6:練習・トレーニング・治療を処方する際に説明を何のためにどんな事をするのかあらかじめ説明してくれる。
3.【考察】選手が求める『良いトレーナー』の3つの条件
個人差はありますが、選手は上記のようなトレーナーを求めているということがわかりました。
ここからは回答をもとに、私なりに『良いトレーナー』の条件を考察します。
結論は以下の通りです。
"『良いトレーナー』の3つの条件"
条件①:専門分野の知識・スキルが優れている
条件②:説明能力がある
条件③:選手の意見を尊重できる
条件①:専門分野の知識・スキルが優れている
選手は、豊富な知識と高いスキルを持つトレーナーを求めているようです。
例えば、
・トレーニングコーチ:パフォーマンスを高め、怪我しにくい身体を作るようなトレーニングプログラムが組める。
・アスレティックトレーナー:早期復帰のためのリハビリが行える。応急処置を適切に実施できる。
などが考えられます。
当然ですが、トレーナーとして役割を果たせなくては、選手から必要とされなくなってしまいます。
知識を蓄え、スキルを磨き、選手により良いサポートを提供する準備を怠らないことが大切ですね。
条件②:説明能力がある
選手は、きちんと説明を受けた上でトレーニングやケアなどに取り組みたいと思っているようです。
様々な取り組みの集大成がゲームでのパフォーマンスを生み出しますので、その一つ一つの意味をきちんと理解したいと思うのは当然ですね。
そのためトレーナーには、パフォーマンスとの関連性に触れつつ、”選手が理解できるように伝えられる能力”が必要だと思います。
ただ、専門用語や経験知を、わかりやすい言葉に変換することはとても難しいです。
そこでブログやSNS等で発信によって、説明能力のトレーニングをすることはトレーナーにとっても有益だと思います。
条件③:選手の意見を尊重できる
選手の回答の中に、
「話し合える」
「対話できる」
「意見を尊重」
といったワードが見受けられました。
これらの言葉から、
選手は、“自分の意見を伝えた上で、複数の選択肢の中から、話し合って納得のいく選択をしたい”という想いを持っていると考えました。
トレーナーには、しっかり選手の意見に耳を傾けることが求められているようです。
ここで、「選手の意見を鵜呑みにしてはトレーナーの存在意義がないじゃないか!!」とお考えの方もいらっしゃるかと思います。
その意見には、私も同意です。
選手の意見を鵜呑みにするだけでなく、トレーナーの持つ専門知識や経験も判断材料にして、多角的に対応を検討することが大切だと思います。
選手の意見を尊重した上で、トレーナーの考えと擦り合わせ最終的な解決策を導き出すというプロセスをきちんと踏めるかどうかが、『良いトレーナー』と「普通のトレーナー」の差を生むのではないでしょうか。
4.まとめ
今回はプロ野球選手にインタビューし、『良いトレーナー』の条件を探ってみました。
プロ野球選手からの回答は、私個人としても非常に参考になりました。
回答をもとに、私なりに考えた『良いトレーナー』の条件は以下の通りです。
"『良いトレーナー』の3つの条件"
条件①:専門分野の知識・スキルが優れている
条件②:説明能力がある
条件③:選手の意見を尊重できる
あくまで私見に過ぎませんが、以上のような条件を満たすことができれば、プロ野球選手にも信頼されるような『良いトレーナー』になることができるかもしれません。
もちろん、対象者がプロ野球選手のみでしたので、他の競技やアマチュアの選手では異なる条件になるかもしれません。
たまには選手から評価されることも大切
この記事の執筆を通し、選手から評価をしてもらうことは非常に大切だと思いました。
選手からの意見を分析し、気付きを得ることは、トレーナーとして自らを改善していくために重要だと考えます。
読者の皆さんも『良いトレーナー』の条件について考えて、ご自身の活動に生かしてみてはいかがでしょうか?
もし考えた方はコメント欄・SNS等で意見を聞かせていただけると嬉しいです。
機会があれば、監督やコーチ、他のスタッフが考える『良いトレーナー』についても調べて見たいと思います。