BlogS&Cコーチ 小川航平 | CSCS

トレーニング

自体重トレーニングのメリット、デメリット、現場での活用法

・自体重トレーニングのメリットが知りたい

・自体重トレーニングのデメリットが知りたい

・自体重トレーニングを現場で有効に活用するにはどうしたらいいの?

とお悩みの方はいらっしゃいませんか?

本記事を読めば、

・自体重トレーニングのメリット

・自体重トレーニングのデメリット

・自体重トレーニングの現場での有効な活用法

を知ることができます。

著者は、6年近く、スポーツ現場でトレーニング指導を行っており、その中で自体重トレーニングを必ず実施させています。

その経験上、自体重トレーニングは、メリットやデメリットを踏まえて有効に活用すれば、非常に使い勝手のいいトレーニング方法だと言えます。

また、本記事はトレーニングに関する海外の文献も参考に執筆しています。

目次

自体重トレーニングのメリット、デメリット、現場での活用法

「自体重トレーニング」は、体重を負荷にしたトレーニング方法のことです。

例えば、
・腕立て伏せ
・シットアップ(腹筋運動)
・自体重スクワット
・懸垂
などが代表的です。

ダンベルなどの重りを使わないことから、非常に使い勝手の良いトレーニング方法であり、多くのスポーツ現場やアスリートが活用しています。

本記事では、自体重トレーニングのメリットとデメリットを解説いたします。
その後、メリット・デメリットを踏まえて、現場で有効に活用するためのポイントを解説いたします。

自体重トレーニングのメリット

自体重トレーニングのメリットは、
①アクセシビリティが高い
②汎用性が高い
③複数の筋を同時にトレーニングできる
の3つです。

①アクセシビリティが高い

※「アクセシビリティ」とは、アクセスのしやすさ、実行のしやすさを指します。

自体重トレーニングは、
・コストがかからない
・道具や場所の制限が少ない
・複数名でも同時に実行できる
という3つの主な特性から、他のトレーニング方法に比べアクセシビリティが高いと言えます。

コストがかからない


自体重トレーニングには、特別なトレーニング機材を必要としないため、コストが圧倒的に低いです。
コストの低さは、導入のしやすさに直結します。

最新テクノロジーを用いたトレーニング方法が存在したとしても、その導入には膨大なコストがかかることは珍しくありません。
その点、自体重トレーニングには、ほぼコスト0で導入できます。

道具や場所の制限が少ない


上記の通り、自体重トレーニングは特別なトレーニング機材を必要としません。

また、多くの自体重トレーニングは一畳ほどのスペースがあれば実行できるものばかりです。
つまりは、ジムやグラウンドだけでなく、通路や駐車場、遠征先のホテルの部屋や空きスペースなど限られた環境でも実施できます。
※事前に管理者の許可は取るべきだと思います。

道具や場所の制限が少ないということは、臨機応変な対応が求められる状況において圧倒的な強みです。

複数名でも同時に実行できる


自体重トレーニングは、特別なトレーニング機材を必要としないため、複数名でも同時に実行できます。

この複数名でも同時に実行できるという特性は、選手に対して指導者の数が少ないチームにおいては特に重要です。
指導者目線から考えると、多くの選手に同じことをやらせる指導スタイルは管理がしやすいはずです。

②汎用性が高い

自体重トレーニングは、
・ウエイトトレーニングの基礎になる
・ウォーミングアップでのアクチベートに使える
・環境が変わっても実施できる
という3つの主な特性から、他のトレーニング方法と比べ汎用性が高いと言えます。

ウエイトトレーニングの基礎になる


多くの自体重トレーニングのフォームは、重りを用いるウエイトトレーニングのフォームにそのまま応用可能です。
例えば、自体重スクワットの形を維持したまま、背中にバーを担げばウエイトトレーニングのスクワットになります。

これは、トレーニングを発展させていく(プログレッション)際に、重要な観点です。

トレーニングは負荷を徐々に上げていくことで、継続したトレーニング効果を引き起こすことができます。
したがって、ウエイトトレーニングの基礎となる自体重トレーニングは、中・長期的なトレーニングプログラムにおいて無駄の少ないトレーニング方法だと言えます。

ウォーミングアップでのアクチベートドリルに使える


ある程度のトレーニングレベルに達すると、自体重トレーニングを競技前のアクチベートドリルとしても活用できるようになります。

アクチベートドリルとは、筋肉に刺激を入れて活動を活性化するためのエクササイズなどを指します。
例えば、ウォーミングアップでハムストリングス(もも裏の筋肉)に刺激を入れておくことで、下半身の力発揮を高めたり、ハムストリングスの肉離れのリスクを減らしたりするというものです。

ウォーミングアップとなると、ジョギングやストレッチングが真っ先に思い浮かびますが、自体重トレーニングを実施しておくとアクチベートドリルを取り入れるという選択肢も生まれます。

環境が変わっても実施できる


アクセシビリティの高さと共通しますが、自体重トレーニングは限られた環境でも実施可能です。
したがって、普段とは異なる環境でトレーニングを実施しなくてはいけなくなった場合でも、問題なく実施できるという特性があります。

例えば、
・駐車場
・公園
・通路
・宿舎の部屋
・会議室
などでも実施することができます。

③複数の筋を同時にトレーニングできる

多くの自体重トレーニングは、複数の筋を同時に使います。

例えば、腕立て伏せは、
・大胸筋
・三角筋
・上腕三頭筋
などの胸、肩、肘の動きに関連する筋肉を刺激できます。

また、姿勢を保持するために、
・体幹部
・股関節
の筋群も使われています。

これは、
・時間効率が高い
・日常生活やスポーツの動作に近い状態でトレーニングができる
という強みを生みます。

時間効率が高い


一つのエクササイズで複数の筋肉に刺激を入れられるということは、短時間で多くの筋肉をトレーニングできるということです。
つまり、時間効率が高いのです。

トレーニング時間が限られている場合、効果よりも効率を優先するということも重要です。
そんな時には、時間効率の高い自体重トレーニングが活用できます。

日常生活やスポーツの動作に近い状態でトレーニングができる


日常生活やスポーツでは、体が地面や相手に接している中で、力を発揮するケースが多いです。

例えば、ランニングであれば、足と地面が接しており、足で地面を押す力によって体を前方へ移動させます。
その際、体のバランスを取るために、体幹部や上半身の筋肉も働いています。

自体重トレーニングも同様に、体の一部が地面と接した状況で、バランスを自分自身で取りながら、力を発揮するものが多いです。

一方、マシントレーニングなどは、体が外部の支えによって固定された状態で、手足などの末端で力を発揮するようなものが多いです。

日常生活やスポーツの動作に近い状態でトレーニングができるわけです。

自体重トレーニングのデメリット

自体重トレーニングのデメリットは、
①過負荷刺激を与え続けることができない
②特定の筋をトレーニングするのが難しい
の2つです。

①過負荷刺激を与え続けることができない

過負荷刺激とは、自分の能力(ここでは筋力と考えてください)を超えるような刺激(重量や反復による身体ストレス)を指します。

トレーニングでは、体に過負荷刺激を与えることで効果(例えば、筋力の向上)を得られます。

自体重トレーニングには、過負荷刺激を与え続けることができないというデメリットが存在します。

このデメリットは、以下の理由から、長期的にトレーニング効果を出すために大きな問題となります。

絶対的な筋力の向上が難しい


自分の体重を負荷として用いるため、ある程度自体重トレーニングを続けると、絶対的な筋力の向上が難しくなってきます。

例えば、体重70kgの人が自体重スクワットを実施すると、約70kgの負荷がかかることになります。筋力が低い段階では、筋力の向上は見込めます。

しかし、いずれ70kgの負荷での自体重スクワットでは楽になってきます。
そうなった場合、70kg以上の負荷を体にかけることが難しくなります。

このように自体重トレーニングでは、体重を負荷にするという特性上、継続的に筋力を向上させるのが難しいのです。

継続的な反復回数の増加によって筋持久力が発達する


「重量(体重)が変えられないなら、反復回数を増やせばいいんじゃない?」
とお考えの方もいらっしゃると思います。

たしかに、反復回数を増加させることでキツくなるため、筋力をさらに向上させることができそうな気がしますね。
部活動の現場では、"腹筋100回"や"腕立て100回"のように反復回数が多いトレーニングで選手がヘロヘロになっている姿をよく見かけます。

しかし、継続的な継続的な反復回数の増加によって向上する能力は、主に「筋持久力」と言われています。

多くのスポーツで必要なのは「短い時間で大きな力を発揮する能力」です。
「短い時間で大きな力を発揮する能力」の土台となるのは「筋力」であり、「筋持久力」とは異なる能力なのです。

効率的な「筋力」の向上には、自分の最大筋力の約80%以上の負荷が必要と考えられています。
これは回数にして約5回できる負荷です。

したがって、"腹筋100回"や"腕立て100回"のように反復回数が多いトレーニングは、筋力より筋持久力を高めるトレーニングになってしまうのです。

②特定の筋をトレーニングするのが難しい

複数の関節を同時に動かすエクササイズが多い


自体重トレーニングのメリット「③複数の筋を同時にトレーニングできる」を紹介しましたが、言い換えると「特定の筋をトレーニングするのが難しい」ということになります。

その原因は、自体重トレーニングには、複数の関節を同時に動かすエクササイズが多いという点にあります。

腕立て伏せは、
・肩甲骨
・肩関節
・肘関節
などの関節が同時に使われるエクササイズ(多関節エクササイズ)です。

自体重スクワットは、
・股関節
・膝関節
・足関節
などの関節が使われます。

このように自体重トレーニングの多くは複数の関節を同時に動かすエクササイズです。

そのため、特定の筋をトレーニングするのが難しいというデメリットが存在します。

これは、怪我で弱ってしまった特定の筋肉だけをトレーニングしたい、上腕二頭筋だけ追加でトレーニングしたい、といったシチュエーションでは問題となります。

自体重トレーニングの現場での有効な活用法

自体重トレーニングのメリットを活かし、デメリットを回避するような有効な活用法があります。
それは、

基礎的な筋力と運動特性を強化するために自体重エクササイズを処方してから、より大きな筋力とパワーの適応をもたらす可能性のある他のトレーニング方法に移行する


という方法です。

トレーニングを導入したばかりの選手や、体力レベルの低い一般の方であれば、自体重トレーニングは非常に有効なトレーニング方法です。

なぜなら、
・コストがかからない
・道具や場所の制限が少ない
などの強みが存在するからです。

しかし、ある程度自体重トレーニングを実施していくと、いずれ負荷が不足してきます。

そこで、より大きな筋力とパワーの適応をもたらす可能性のある他のトレーニング方法に移行することで、継続的にトレーニング効果を得ることが可能になります。

文献においても、自体重トレーニングという方法だけに限定せずに、その他のトレーニング方法に移行することを前提に導入することが推奨されています。

オススメは「自体重トレーニング→ウエイトトレーニング」への移行

私がオススメするのは自体重トレーニングから「ウエイトトレーニング」への移行です。

理由は、自体重トレーニングのフォームを、そのままウエイトトレーニングに応用可能できるからです。
これは、メリット「②汎用性が高い」でも解説しました。

自体重トレーニングからウエイトトレーニングへの移行であれば、新しくフォームを覚える時間を短縮でき効率的です。

さらに、ウエイトトレーニングであれば、筋力の高まりに合わせて負荷(重量)をほぼ無制限に増加させていくことができます。

また、ダンベルなどを用いることで、特定の筋を狙ったエクササイズ(単関節エクササイズ)が可能になります。

つまり、自体重トレーニングのデメリットである、
・過負荷刺激を与え続けることができない
・特定の筋をトレーニングするのが難しい
を回避することができるのです。

まとめると、
「基礎的な筋力と運動特性を強化するために自体重エクササイズを処方してから、より大きな筋力とパワーの適応をもたらす可能性のある他のトレーニング方法に移行する」という方法を用いることで、効率よく、長期的にトレーニング効果を得られるようになるということです。

まとめ

いかがだったでしょうか?

本記事では、一般的に広く普及している「自体重トレーニング」のメリット・デメリット・現場での活用法について解説しました。

▼自体重トレーニングのメリット
①アクセシビリティが高い
②汎用性が高い
③複数の筋を同時にトレーニングできる

▼自体重トレーニングのデメリット
①過負荷刺激を与え続けることができない
②特定の筋をトレーニングするのが難しい

▼自体重トレーニングの現場での有効な活用法
基礎的な筋力と運動特性を強化するために自体重エクササイズを処方してから、より大きな筋力とパワーの適応をもたらす可能性のある他のトレーニング方法に移行する。

☆オススメは「自体重トレーニング→ウエイトトレーニング」への移行!!

自体重トレーニングをこれから始める、もしくは現在実施中の方は、本記事の内容を頭に入れて、ぜひ自体重トレーニングを有効活用してみてください。

最後に

本記事の執筆にあたり、著者が感じたことをまとめさせていただきます。

自体重トレーニングに限らず、全てのトレーニング方法にもメリットとデメリットが存在しています。「これじゃなきゃダメだ!!」と限定せず、様々なトレーニング方法を組み合わせ、それぞれのメリットを活かし、デメリットを回避するという考え方がトレーニングプログラムを作成する上で重要だと思いました。

様々なトレーニング方法のメリット・デメリットを言語化しておくことは、そういった組み合わせを検討する上で有益だと思います。今後、他のトレーニング方法に関してもメリット・デメリットをまとめてみたいと思います。

それでは、また別の記事でお会いしましょう。

【参考】
・ADVANCED STRENGTH AND CONDITIONING An Evidence-based Approach(Anthony Turner & Paul Comfort)